城南中学校夜間学級の記事

朝日新聞 2008年5月2日 地方版
http://mytown.asahi.com/fukuoka/news.php?k_id=41000000805020002

明るく読み書き 自主夜学10周年
2008年05月02日


 ■小倉南の中学で集い


 公立の夜間中学がない北九州市で、市立城南中学校(小倉南区富士見)の教室を使ってボランティアが自主運営する「夜間学級」が開設10周年を迎え、1日、記念の集いが開かれた。当初2人だった生徒は25人に増え、漢字検定合格者も輩出。「夜だけど明るい」教室の10年間を生徒や関係者ら約100人が祝った。
岩田正洋)


 夜間中学は戦争の混乱などで義務教育を受けられなかった高齢者らが学ぶ場。全国夜間中学校研究会によると、公立は8都府県の35校で、九州はゼロ。代わりに全国で20校以上が自主運営している。


 城南中「夜間学級」は98年5月、「よみかき教室・城野」として生徒2人、スタッフ6人で開設。当初4年間は城野公民館で週1日だったが、02年から城南中の教室が使えるようになり、日数を増やした。05年には週5日制になり夜間学級に改称。現在は60〜70代中心の男女25人が午後7〜9時に集まり、スタッフから読み書きなどを習う。


 中学校卒業程度認定試験や定時制高校の合格者に加え、昨年は初の漢字検定合格者も輩出。小倉南区上葛原から通う木本勝美さん(68)が6級、妻のサヨ子さん(71)が7級に合格した。


 勝美さんは小学3年生ごろから親類の子守を任され、6年生から土木作業に従事したため、きちんと義務教育を受けていない。「いつも学校に行く夢を見ていた」勝美さんは5年前、夜間学級の門をたたいた。通い始めると、酒に酔って、くだを巻くこともなくなったという。「2人で(夜間学級に)こられてほんとうによかった。家の中が明るくなりました」。サヨ子さんは文集に、そう書いた。2人は「うれしいこと、悲しいことを、ちゃんと日記に残せるのがうれしい」と話す。


 夜間学級は05年度以降、市教委から年間100万〜150万円の運営補助を受けているが、ボランティアで続けるか公立にするか、09年度中に運営方法を決める。代表の川村公子さん(58)は10周年を祝う集いで「多くの人が集まり学び合う本来の学校の姿が、ここにある。この温かい雰囲気を残したまま、早く公立中学校にしたい」と話した。



「10周年を祝う集い」で、そろいのシャツを着て鍵盤ハーモニカを演奏する夜間学級の生徒たち。3カ月も練習したという=北九州市小倉南区〔写真キャプション〕