夜間中学 不況が影/寄付金激減 授業料値上げ/珊瑚舎スコーレ

運営ピンチ 支援訴え

沖縄タイムス』2009年2月1日

 県内唯一の夜間中学校を運営するNPO法人珊瑚舎スコーレ(星野人史代表)が、寄付金不足で運営が厳しくなり、来年度からの授業料引き上げを決めた。学校運営の基盤だった寄付金がおりからの不況で激減、上げざるを得ないという。生徒の大半は戦中戦後の混乱で学校に通えなかったお年寄りで、授業料の増額はようやくつかんだ「学びの夢」を奪いかねない。星野代表は「行政が協働して夜間中学を運営し、生徒の学ぶ権利を保証するべきだ」と訴え。寄付金や行政の支援を募っている。(又吉嘉例)


 夜間中学の授業料変更は二〇〇四年の設立以来初めて。年間一万五千七百五十円から三万千五百円に引き上げる予定だ。


 ボランティア教師が支える同NPOの運営費は、年間三千万円前後。毎年県内外の有志から集まる五百万―七百万円の寄付金は大切な「収入源」だったが、「不況の影響からか、この半年で寄付の申し込みがガタンと減った」(星野代表)。


 定期的な寄付が十件以上、数百万円の大口の寄付もなくなった。同NPOは急激な負担増を避けるため、奨学金からの補てんで授業料の減額措置などを行う。


 一月二十八日には、那覇市樋川の同校で生徒の意見交換会が開かれた。「経済的にはみんな苦しい。やめる人も出る」「宝物のような学校なのに」。参加した約二十人から、授業料引き上げに戸惑いの声が上がったほか、学校の存続を求める切実な願いも相次いだ。


 那覇市の崎濱久子さん(72)は入学前、平仮名の読み書きができなかった。小学一年で沖縄戦が始まり、勉強どころではなかった。終戦後も生活に追われ、通学できなかった。今でも「わずかな年金を工面して授業料を払い、夜は電気もつけないほど切り詰めている」と語る。


 それでも寝る前には「いい学校があって良かった。ありがとう」と、教職員に感謝して目を閉じる。「弾傷は治るけど、学校に行けなかった心の傷は治らない。義務教育が終わらない限り、わたしの戦争は終わらない」と力を込めた。


 浦添市の手登根光子さん(71)は、義務教育を修了できず高校進学や美容師の夢を絶たれたといい、「戦争から続く貧しい生活の中で教育を受けられなかったのは、政治や行政の責任ではないか」と訴える。「新たな人生をつくるチャンスがほしい。社会に役立てる知識を修められるよう、手を差し伸べてください」と支援を求めた。


 珊瑚舎スコーレへの寄付の問い合わせや申し込みは、電話098(836)9011。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-02-01-M_1-023-1_001.html?PSID=f858735c6646655ee1702b1f34bcc9aa